日本で活動するということ

ジュエリーを手掛ける者が日本で活動をするということは、実はそれだけで、ずいぶんなハンディキャップを背負っているということでもあります。

この国にはジュエリーの歴史がなく、ゆえに様々な局面においてフラストレーションが生じます。日本人は工芸において繊細な技量を発揮するというイメージがありますが、この業界においては、本場ヨーロッパと比べるとまだまだ差があります。職人の技術、地金の仕上がりなど、国内最高峰のスタッフを選択して作品を完成させたとしても、それは私の知っている最高の品質を備えたものではないかもしれない、ということなのです。

そして現状では、事実をご理解の上、それでもなお、お買い求めいただけるようお願いする他ありません。もちろん私も、それでよしとしている訳ではありません。製作にあたり、可能な中での最良の品質を常に追求することはもちろんですが、最良の限界を継続的に押し拡げていくことも、私たちの使命であると考えています。そこには、これまで日本では手に入らなかった技術を導入する、といった大掛かりな動きも含まれるでしょう。

ただ、そんなことではヨーロッパに追いつくことは難しいし、彼らの伝統と比較して我々を選んでいただくだけの材料にはならないとの意見もあるかもしれません。しかし、いかに老舗のジュエラーといっても、その歴史はたかだか数百年。今、指輪にセットされようとしている宝石は、数億年の歴史をくぐり抜けて現前しています。それを用いて、お客様それぞれの物語を作品に散りばめるという我々の仕事の本質を考えれば、諦めるほどの差はついていない・・・と、思います。必要なのは、理念、情熱、そしてイメージを形として紡ぎだせる能力。その点において劣るところはないと信じて、私たちは発展を続けてまいります。